民俗資料
「民俗資料」の語がはじめて用いられたのは、柳田國男の1933年の講演からであり、文献では『民間伝承論』(1934年)、『郷土生活の研究法』(1935年)から示される。ここで、柳田は「民俗資料」という用語を「郷土史の新史料=民間伝承の採集記録」という意味で用いている。また、折口信夫は、「民俗資料」について、1.周期伝承(年中行事)、2.階級伝承(老若制度・性別・職業・生得による区別)、3.造形伝承、4.行動伝承(舞踊・演劇)、5.言語伝承(諺・歌謡・伝説説話)の5分類を提示している[1]。第二次世界大戦後、「民間伝承」という言葉にかわって「民俗」という言葉が普及すると「民俗資料」の語も幅広く使われるようになった。これとともに「民俗資料」の指し示す内容も単に民俗(民間伝承)の採集記録にとどまらず、民具など有形の資料(有形民俗資料)をも含めるようになった。
1950年(昭和25年)に制定された文化財保護法では、従来の古器旧物や記念物を総称して文化財と名づけ、「有形文化財」「無形文化財」「史跡名勝天然記念物」の3種とし、そのうちの有形文化財の一つとして「建造物」や「絵画」などとならんで「民俗資料」を位置付け、民俗資料に対しても国家の保護・保存の措置を講ずることとした。文化財保護法の1954年(昭和29年)の改正[3]にて、民俗資料を有形文化財から分離するとともに、民俗資料の具体的な概念・定義が法令上なされ、有形の民俗資料のうち特に重要なものは「重要民俗資料」として指定して、重要文化財に準じて国家的保護を与えることとなった。また無形の民俗資料も保護の対象となり、合せて「重要民俗資料指定基準」が告示された。
「重要民俗資料」の存在は、民俗資料の少なくとも一部は文化財として後世に伝えるべきものであるという社会的認知を広める結果となり、1975年(昭和50年)の改正[4]時には従来の「民俗資料」の語は改められて、現在では「民俗文化財」の語が使用されている。

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